失業者が増える前に専門実践教育訓練給付金の活用促進補完
コロナ禍で追加補正予算になった10兆円の活用先は災害支援、
医療機関への経営支援等に徐々に決まっているようである。
休業手当、失業給付については、雇用保険の収支の枠組みの中での支出だけになれば、
その金額は限られている。
現在のところ、可能なかぎりが雇用を守る姿勢で企業が危機に対応しているため、
失業率の目立った悪化は見られていない。
しかし需要喪失によって仕事自体が無くなり休業となっている人、
その結果、失業者となっていく人はこれから数か月、半年後に増えていく可能性が高い。
いずれ400万人近い失業者が発生するとの予測もある。
無くなってしまった国内の需要回復のための施策は、
感染第2波の到来による自粛要請によって当面の間、十分な効果は期待できないだろう。
需要喪失による雇用機会の喪失が予測されてきた段階で政府は対策を打ち出す必要がある。
政府は労働市場に任せるだけでなく、
人手不足の業界に労働者が移っていけいるように様々な教育訓練給付金の仕組みを周知し、
その活用の在り方についても補完することが重要である。教育訓練給付金は教育訓練経費の20%(最大10万円)までしか支給されない。
一方、専門実践教育訓練給付金は50%最大3年間で120万円が支給される。
その支給対象には、
1. 独占資格宇業務の看護師、介護福祉士をはじめ、
5. 一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程
6. 第四次産業革命スキル習得講座 高度IT分野等、将来の成長が強く見込まれ、
雇用創出に貢献する分野に関する社会人向けの専門的業務等が含まれている。
特に、5、6.については現在30万人以上が不足しているというプログラマー、ITエンジニアも含まれているはずである。
日本は2025年の外国製統合ERPソフトのサポート切れに向け、相当なIT人材不足が予測されている。仮に400万人の失業者がでた場合にその半分の200万人が次の職種にIT業界、プログラミング教育を受けるように推奨していくことができれば、雇用機会の創出につながるはずである。2025年問題への対応で活躍できる人材に育っていく可能性もある。
200万人分の専門実践教育訓練給付金は一人120万円の場合、2兆4000億円になることになる。通常の雇用保険の収支で賄えない場合は、今回の追加補正予算を活用すればよい。
コロナ禍の再就職支援の中で、専門実践教育給付金の活用が進んでいけば、日本の未来は明るい。高度IT人材が多数活躍するようになりIT後進国となってしまった現在の状況を打開できるようになる。そうなれば、若者をはじめ全世代の雇用機会創出となり消費も活発になる。雇用機会創出、消費拡大の循環が日本の未来を明るくする。
参考:日本経済新聞 2022年1月8日 朝刊5面 雇用保険 進まぬ国負担増 労使25%に引き上げを コロナ財政悪化に拍車・・・労働政策審議会・・・料率引き上げ10月から
失業手当の給付期間柔軟に あるべき雇用政策
奥平寛子 同志社大学准教授
経済教室
2020/7/23付[有料会員限定]
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