Categories: 労働生産性

義務教育で『好きを仕事にする』を教えるのは正しい教育か


義務教育で『好きを仕事にする』

を教えるのは正しい教育か

義務教育の小中学生の時に

誰もが聞いたことがある職業観に

『好きを仕事にする』というものがある。

約10年前の文部科学省中央教育審議会

「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方に

ついて(答申)(平成23年1月31日)の一部を抜粋すると

『・・・・・人は、このような自分の役割を果たして

活動すること、つまり「働くこと」を通して、

人や社会にかかわることになり、

そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」

となっていくものである。

・・・・・・・自らの役割の価値や自分と役割

との関係を見いだしていく積み重ねが

「キャリア」の意味するところである。

『職業の収入及びその職業が安定して

稼げるか』といった事は全くでてこない。

また、『何歳までに親から経済的に自立すべきか、

親の収入や年金を当てにして家に居るのは何歳までが限界か』

といった事は教えられていない。

おそらく『自分らしい生き方』の部分が

『好きを仕事』にする職業観の根拠となっているようである。

小中学生の時から『好きを仕事にする』という

職業の価値観を教えられた人は、18歳か22歳前後、

あるいは大学院を卒業する24歳前後に、

就活難の時期にぶつかるといつまでの親を

当てにする生活に入ることになる。

小中学生の時に教わる『好きを仕事にする』は、

たいていスポーツ選手、芸術家、芸能人の話がほとんどである。

その人たちがその道に進むとき『上手くいかなかった時は

貧乏の生活を覚悟していたか』『親は安定した自営業で

継ぐこともあり得る事業だったか』などの突っ込みを

入れてくれる担任の先生は少ない。

その結果『好きな仕事』に30歳から40歳まで

こだわり、無職、非正規雇用で転職を繰り返す人が

多数生み出している。その結果、今、

日本の年金制度、生活保護制度を危うくしかけている。

おそらく就職氷河期と関係なくこれからも続く

可能性が高くなってきている。

コロナ禍で新卒採用の枠は大幅に減っている

可能性が高いからである。

本来、義務教育で教えるべき勤労観は

『嫌いじゃないを仕事にする』

『一定水準以上の安定した収入を

得られる職業は何か』

『最低賃金で週40時間働く生活の収入に

自分は何歳までなら耐えられるか』といった事を

しっかり教えるべきではないだろうか。

でも実は、子供たちもしたたかに

小中学校の職業教育の偽善を見抜き、

就活の時に『やりがい』か『年収』かで

天秤にかけて就活を終える。

『やりがい』も『年収』も手に入れる

ピカピカの新卒エリートさんは

ごくごく一部である。

起業して10年以上続くのは10パーセント未満で

あることと同時に、一般的サラリーマンの

業界別の平均年収と公務員の年収ぐらいは、

義務教育で教えるべきである。

それでも

やりがいや自由のある起業の道に進むか、

好きな仕事のできる業界を選ぶかは本人次第である。

『嫌いじゃない』を選択できるようにするために、

早めにコツコツ勉強して忍耐力を磨き、

資格取得の準備をする人もいる。しかし、

就活の1年2年いや3年間でも

決めきれない人も多いはずである。

だから、3年以上かけて広い視野で

職業観を学べるように義務教育の早い段階で

積極的に『嫌いじゃないを仕事にする、

そこそこ納得のいく年収』といった本音の教育を

してあげることが重要ではないだろうか。

下記参考の職業発達論では、

11歳まで(小学高学年まで)の

①空想期は、自分の能力も現実も知らず、

自分がなりたいと思うものになれるかのように

信じているので、職業選択は非現実的(空想的)であるとしている。

日本の義務教育でのキャリア教育の場合は、

この時期を過ぎても『好きを仕事にする』を教えられる機会が

多すぎるような気がしてならない。

②試行期③現実期になっても非現実的な

職業観の人も少なくない。親元から通学し

寮生活の学校が少ないことも影響していると思われる。

その事情を考慮しても、せめて25歳から30歳までは

『現実期』として親の収入(年金含む)を当てにしない

人生設計をするように働きかけるべきである。

ハローワークや就活支援企業、国家資格となったキャリアコンサルタントの役割はこれらかも大きい。

参考: キンズバーグ(Ginzberg,E.1911-2002)の職業発達論

抜粋

①職業選択は、青年期の期間10年以上かかる発達的プロセス。

(のちに「生涯を通して」と訂正)

②そのプロセスは非可逆的(逆戻りのない状態)。

(のちに「絶対的ではない」「後戻りも可能」と訂正)

③職業選択は、個人の欲求と現実の選択肢の妥協。

(のちに妥協ではなく「最適化」と訂正)

職業的発達プロセス

①空想期(〜11歳)

②試行期(11〜17歳)

1、興味 2、能力 3、価値 4、過度期(移行)

③現実期(17〜20代前半)

1、探索 2、結晶(具体化) 3、特殊化(明確化)



kojihosokawa

生活経済学会準会員 経済知力スコア 667 日経TEST 第27回 全国一斉試験(オンライン) 実施日 2021年11月30日  一般社団法人 品川法人会 賛助会員

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