日本経済は消費政策によって再生する。(2020年1月初回投稿 2022年6月4日参考追加)
日本は失われた30年の間、従来の政府によるマクロの経済政策として
財政政策、金融政策をやり尽くしてきた。
名目GDP、実質GDPいずれもかろうじてプラスを保っているが、
経済成長に勢いがない。
一方、今まで、ミクロの経済政策として、小規模な所得税減税は行われてことはあるが、
国内総生産GDP(約545兆円)の6割(302兆円)を占める消費全体に着目した政策はとられていきていない。
最近になってようやく雇用者報酬(275兆円)に着目した政策として最低賃金法改定による
最低賃金の継続的引き上げが実施されている程度である。一方、個人消費を支える総人口は、
2018年10月現在で約26万人減少(マイナス0.2%)し8年連続の減少となっている。
出生児数94万人から死亡者数136万人を引いた自然増減数は42万人となり
12年連続の自然減少となり減少幅を拡大させている。(自然増加は13年前の8万人が最後)
日本経済新聞2022年6月4日の一面の記事によると
出生率は、6年連続低下、最低だった2005年の1.26に迫る勢いの1.30である。
生産年齢(15歳〜64歳)を中心とした3区分でみると、15歳未満人口は、1,541万人で前年にくらべ18万人の減少、
15歳〜64歳は7,545万人で前年に比べ51万人の減少しているが、65歳以上人口は、3,557万人で前年に比べ43万人の増加となっている。
原則65歳以上で受け取ることのできる公的年金は現在、社会保障給付費(ILO基準)117兆円の50%近くを占めており約55兆円である。
この55兆円は、2ヶ月に1度、偶数月の月半ばに年金受給者に支給され、小売業(スーパー、コンビニエンスストア)の売上拡大に貢献している。
55兆円という規模は日本の国内総生産(GDP)の10%近くの数値に相当する。
これらの消費は、小売事業者よって誰かの所得(雇用者所得)となり、また消費に回ることになる。
これらの年金支給額から始まる消費⇛所得⇛消費⇛所得⇛最終消費の循環によってGDPを押し上げることができる。
仮に55兆円のうちの7割が事業者の利益や貯蓄に回るとしても3割の16兆円はだれかの所得(雇用者所得)を押し上げる効果がある。
これはGDPの3%に相当する数字である。消費が誰かの所得に転化する過程は年金受給者の有効な消費と定義することができる。
循環により所得が増えると個人の消費意欲を増加させやがて持続的な政府歳入の増加(所得税、消費税)につながる。
世帯主が65歳以上の家計の貯蓄率は低下傾向にあるため、
年金の55兆円は貯蓄への漏れの少ない有効な消費となっているとみることができる。
消費水準は、今後も同様に得られると予想される平均的な所得の恒常所得に依存するため、
年金受給者の消費水準は今後も有効な消費として国内総生産(GDP)増加を牽引することが見込まれる。
また国民皆保険制度(社会保障給付費のうち医療費は32%の38兆円)の日本においては、
高齢者が医療費や終末期の施設入居などのためにかかる費用に備えて予備的貯蓄を行う可能性も低い。
一方で年金受給権を取得する前の生産年齢の前半(15歳〜40歳)の世代においては、
恒常所得仮説が見通しにくい時代になってきており、消費水準をあげづらくなっている。
こうした中、最低賃金の改善、雇用者所得の改善が進みつつあることは、望ましいことである。
今まで民間主導で行ってきたデマンドサイド、コンシューマーサイドの景気刺激策を政府が関わる経済政策として
行っていくことにより日本経済はまだ成長できる。
参考追加: 日本経済新聞2022年6月4日の朝刊一面 出生率 6年連続低下 昨年 1.30最低に迫る。少子化対策 空回り
参考追加:日本経済新聞電子版 消費喚起こそ改革の本丸に 2020年10月24日 2:00 [有料会員限定記事]
参考文献・・日本経済のマクロ分析・低温経済のパズルを解く・・鶴光太郎 前田佐恵子
村田啓子・日本経済新聞社
・・ケインズの経済学と現代マクロ経済学・・大矢野栄次・・・同文館出版
・・労働経済、厚生労働白書・・・・厚生労働省HP
・・マクロ経済分析ーケインズの経済学ー 佐々木浩二著 創成社
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