給付納税回転率
給付納税回転率(2022年11月24日 参考追加)
さまざまな給付金が国(Nation)から国民(People)に支給されている。今まで国の役割は主に
公共財、公共サービスの提供であった。
・財政政策という形をとり民間企業の設備投資を刺激して雇用を生み出し景気を下支えしてきた。
・金融政策という形をとり民間金融機関の資金需要を支えてきた。
それが民間企業からの雇用者報酬という形で1人1人の国民(People)にいきわたり人々は豊かさを実感できた。それが実感できるまでにはある程度の時間がかかった。(半年から時に数年)
しかし今回のコロナによる経済活動の制限はこの流れを止めることになった。雇用者報酬が消費につながりそれが、新たな設備投資の需要を生んできた流れが止まった。
そこで国(Nation)の役割が変わった。給付金を直接国民に支給して消費を刺激する必要性がでてきた。循環する経済の流れの中で半年以上も時間がかかることは許されない状況になった。
しかもそれは、消費政策として国民にこれまでよりも短い時間で行き渡る事が肝要である。
個人や個別の企業(中小、中堅企業)に直接給付金が届けられる必要がある。
少なくとも雇用保険の待機期間より早く支給できる制度でないと意味がない。給付金が目先の困窮、資金繰逼迫から国民を救ってくる仕組みとして機能させる必要があるからだ。
10万円の給付金が100万円の消費刺激につながれば国に10万円の消費税が還ってくる。
この流れを給付納税回転率 1.0回転、と定義して分析できれば、国の経済政策に選択肢が増えることになる。
国が10万円支給して国に10万円が納税される仕組みとして機能すれば政府債務は増大しない(給付がすべてはじめから貯蓄に回ってしまう場合については給付納税回転率0回転と定義し、1回の消費で最終消費になる場合消費税10%の場合で0.1と定義する) ところが、10万円の給付金の支給が将来の増税の要因につながると国民が予測する事になると消費を十分に刺激することができず、給付金支給の経済効果は失われる。政府債務が増大するだけに終わる。
目先の困窮者への国の対策として生活保護がある。2017年5月時点のデータで164万世帯、214万1881人で合計3.8兆円(国民の1.7%)が支給されている。
この割合は、今後増えていくと思われる。給付金の支給目的はこの生活保護受給世帯が増大しないようにすることでもある。それは政府債務の増大を最小限に抑制できる事を意味する。
給付金の支給によって消費刺激、雇用回復が期待できれば、生活保護受給世帯の増大は最小限に抑制することができる。悲嘆にくれて死を選ぶ人もいなくなる。
給付納税回転率は、マイナバーカードの普及によってある程度の測定が可能になる。
もっと正確にデータを取る必要がある場合は、聞き取り調査と合わせて中央銀行によるデジタル通貨の導入が必要であろう。日銀による研究が進みデジタル円の導入が期待される。
給付納税回転率は、給付金の国(Nation)から国民(People)の流れと納税の国民から国への流れの総称として 『N to P』 あるいは『P to N』と呼ばれるようになれば国民全体に理解されやすい。
なぜなら、 民間企業の間では、法人と消費者の間の直接取引をB to C(Business to Customer) と呼びターゲット戦略を練りだして長いからだ。
危機管理、緊急対策時においては、『N((Nation) to P(People)』のターゲット戦略による
消費政策が重要だ。マイナンバーカードの普及により複雑な申請手続を経ないで生活困窮者を救いだすことにもつながる。
給付納税回転率を上げれば、政府債務の増大も最小限に回避できる。こうした循環経済の流れが定着すれば、日本の未来は明るい。時間をかけて名目GDPを回復した後、再び経済の成長軌道に乗ることができる。15年以内に必ずこの流れ起こる。国民一人一人が忍耐強く努力して希望を失ってはならない。
参考:日本経済新聞 2022年11月24日 朝刊1面 抜粋 日銀、3メガとデジタル円の実証 来春、口座の入出金確認 26年にも発行判断
参考文献:危機の時代 ジム・ロジャース 日経BP
生活経済学研究 第51巻 2020年3月(Journal of Household Economics vol.51)書評『検証・新しいセーフティネット-生活困窮者自立支援制度と埼玉県アスポート事業の挑戦(新泉社 2019年)
生活経済学会(The Japan Society of Household Economics)
厚生労働省 生活支援
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf
国税庁 税について
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/index.htm